これは私がゲストハウスを運営していた時の話である。
入り口の階段でだらーっと日向ぼっこをしていた時、
「今日泊まることはできますか?」
と声をかけられた。
どう見ても未成年な若い男の子がオドオドした様子でいた。
平日の昼間なのに珍しい。
自称高校生の彼は、内地から家族で沖縄旅行に来ており、
友人と一泊遊ぶ予定で家族と別行動していたが、ドタキャンされたため宿を探しているという。
私「ドミトリーしか空いてないけどいい?」
少年「大丈夫です。」
若い子ほど
「ドミトリー?なにそれ?」
ってなりそうだが、そんなこともなくスムーズにチェックイン。
この時点で怪しいと思えればよかったのですが、困っている様子に同情してしまい、身元確認もしませんでした。
受付しながら軽く会話をしたが、普段学校に行っておらず、
そのまま学校を辞めて沖縄に移住したいと思っている。なんて話をした。
私も学校はサボってばかりで進級や卒業に苦労したタイプだったので、ちょっと親近感。
私「一泊2000円だけど、今回は1000円にしとくねー。」
その時の私がハタチくらいだったので、珍しい年下のお客様かつ沖縄好きっぽい雰囲気に、値引きまでしちゃう太っ腹精神が発動。
設備とルールの説明をし、ベッドへ案内。
そのうちリビングに来て一緒に話でもできるかなーと思ってたけど、共有のマンガをベッドへ大量に持っていき、それから会うことはありませんでした。
夜から宿の管理はヘルパー任せ、私は遊びに夜の街へ。
その日ラストの担当が売上を封筒に入れ、金庫に保管することになっているのだが、
翌日、金庫の中にあるはずの昨日の売上約10万円が消えていた。
ラストを担当したヘルパーに確認したが、ちゃんと金庫へ保管したとのこと。
ガヤガヤしているうちに、他のヘルパーや長期滞在のお客様にも話が周り、皆で探したが全然見つからず、最終的に警察も呼んだが結局出てくることはなかった。
他に被害はなかったのでそれ以上大きな騒ぎになることも無く、売上が入った封筒はどこかに失くしてしまい、大掃除でもしたら出てくるだろう程度の考えであった。
そして事件から1ヶ月ほど経ったとき、
ゲストハウス荒らしが捕まったという連絡が来た。
荒らしの特徴を聞いたところ、
”家族で旅行に来て、ひとりで宿を泊まらないといけないトラブルにあった。”
という設定でゲストハウスに宿泊し、売上を盗んでいく中学生の男の子ということだった。
その話を聞いた時に、
「あの子か!」
と男の子のことを思い出したのだ。
思い返すと怪しいポイントがいくつもあったなー。と今更気付く。
なんとも間抜けである。
小さなお客様といえ、身分を偽り宿泊し、受付室へ侵入し、隠してある鍵を探し出し、気づかれることなくお金を盗んでトンズラする。
はえー、すっごい。
思わず関心してしまった。
小さくおとなしそうな子だったあの子は悪いことをしないと勝手に思い込んでいた私。
最悪他の宿泊客やヘルパー達に被害が出た可能性があったと思うと酷く落ち込み、猛省した。
普段の行いを棚に上げたヘルパー達からもボロクソに叱られました。
警察が来た時、男の子のことをしっかり伝えていたら何か変わっていただろうか。
変わらなかったとしても、その時まっっったく疑うことの無かった自分がなんともアホで恥ずかしいことか。
ちなみに消えた約10万円だが、犯人が私のゲストハウスは知らないと言ったらしく、
こちらも特に追求しなかったからか戻ってくることはなかった。
ゲストハウスをやっている方ならなんとなんくわかってくれる話じゃないかな。
お客様やヘルパーを信じてセキュリティが疎かになっていませんか?
この事件をきっかけに宿のセキュリティが一段階上がりました。
といっても「貴重品の管理や戸締まりはしっかりね。」の案内をしっかりするくらいですが。
思い出したことを書いてみたので、特に大きな盛り上がりやオチはありません。
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